TOP > ベッドスタイルコラム > ベッドと私の楽しい生活 > 20色カラーのマットレスベッド(ナチュラルベージュ)は祖父の色
祖父が好きな色は、ナチュラルベージュでした。
スーツも、ワイシャツも、ネクタイも、ナチュラルベージュでした。
マフラーも、手袋も、靴下も、ナチュラルベージュでした。
しかし、全身ナチュラルベージュでは、センスも何もあったものではありません。
いつも祖母が、祖父に言い聞かせるようにして、全体のバランスがとれるように、
コーディネイトしていました。
でも、祖父はとにかく、ナチュラルベージュが好きでした。
その好きさ加減は特別で、ソフトクリームまで、ナチュラルベージュ色の、
チョコミルクしか食べませんでした。
そんな祖父の大好きな、ナチュラルベージュのカバーを、私はマットレスベッドに掛けました。
勿論、祖父が大好きな色だったということは、私の脳裏に浮かんでいました。
その時、私はまだ、保育園児でした。
共働きの両親が、仕事から帰ってくるまでのあいだ、私は祖父の家に預けられていました。
午後の3時に、保育園から祖父の家に帰ると、まずはおやつを食べました。
祖母特製の、手作りポテトチップスです。
揚げたてで、塩加減もちょうど良く、私は大半を、1人で平らげてしました。
祖父母は2人とも、私が食べ終えるまで、自分達は食べませんでした。
そうして、おやつが終わると、決まって祖父は、私を外へ連れ出すのでした。
海の近くの、ゴーカートセンター。
市営の小さな遊び場でしたが、私は、それに乗るのが大好きでした。
私が、真っ赤なゴーカートに乗ると、祖父はナチュラルベージュのゴーカートを選びます。
最初は、2人で並んで走っているのですが、知らないうちに、私はどんどんスピードを
上げてしまうのでした。
「危ないぞ!」祖父の声が聞こえても、私はスピードを緩めません。
更にさらにスピードを上げて、走り続けます。
すると祖父は、自分のゴーカートから降りて、私のところまで走ってきます。
真正面から、私のゴーカートを両手で押さえて、ストップさせるのでした。
祖父のセーターも、ズボンも、帽子も、ナチュラルベージュでした。
ナチュラルベージュを見ると、私は、亡くなった祖父を思い出します。