TOP > ベッドスタイルコラム > ベッドと私の楽しい生活 > 引っ越し最後の荷物は折りたたみベッド
私が引っ越しをするのは、これで5回目です。
こんどは、東北の秋田へ行くことになりました。
いくら仕事の関係とはいえ、引っ越しというのは、なかなか大変で寂しいものです。
今でこそ慣れてきましたが、最初は本当に大変でした。
住みなれた部屋の中で、私は、ひとり荷づくりを始めます。
毎日使用する、歯ブラシやタオル、茶碗やお皿などは、引っ越しの2日前まで
仕舞わずに残しておきます。
冷蔵庫の中の食品は、引っ越しの前日までには、食べてしまわなければなりません。
そんなことを考えている内に、ついに、あと2日となってしまいました。
私は、残っていた食器類も、全てダンボールの中に仕舞い込みました。
そして、最後の日の朝食は、マクドナルドでハンバーガーを食べました。
昼食はファミリーレストランで済ませ、そしてこの街での最後の夕食は、顔馴染になった
食堂で、小母さんお得意の肉じゃが定食を食べました。
自分の部屋へ戻り、お風呂に入ります。
私は、テレビをつけて、しばらくのあいだニュースを見ていました。
そうそう、忘れるところでした。本当に最後の荷物は、この折りたたみベッドでした。
この仕事を始めるときに、私は周囲の人たちから、転勤がとても多いといわれていました。
だからベッドは、コンパクトに折りたたんで運べる、折りたたみベッドにしたのでした。
明日の朝、目が覚めたら、すぐに布団入れに布団を仕舞います。
そしてこのベッドを折りたたんだら、本当にこの部屋とも、この街とも、お別れです。
私は、窓のカーテンを開けて、外を眺めました。
家いえの暖かな灯りが、少しづつ消え始めていきます。
ひとつ、ふたつ、と、消える度に暗闇が拡がっていきます。
何となく寂しくなって、私はカーテンを閉めました。
ベッドに横になると、この街であった様々な出来事が、脳裏に蘇ってきます。
2年という短いあいだでしたが、私はこの街がとても好きでした。
食堂の小母さんや、職場の人たちの顔が、浮かんでは消え、また浮かんできます。
ありがとう…と、口に出していってみると、ほんの少し気持ちが安らぎます。
ベッドの中に入り、私はそっと瞼を閉じました。